ピエロの自画像
作品ナンバー 0−51
階段を上がっていく途中、私は踊り場横のこれも古びたドアに「版画工房」の文字を見つけました。
思わずドアを開け中を覗いて見ると、そこは何台かのプレス機が置かれた部屋で、積み上げられたインクの缶の陰で、一人の青年がリトグラフを刷っていました。
刷られている絵に見覚えがありました。版画の専門誌か、何かの美術誌で見たことのあるものでした。
「ここでは木版画は教えていません。」
「遠志さんが、確か教えていると聞いたけど。」
彼とのやり取りで、今も覚えているのはこの部分だけ。
その彼とは後に版画協会展の会場で再会するのですが。
そして話は冒頭の遠志先生の話へと続くわけです。