T氏の誕生日

作品ナンバー  0−52

東京の師のスタジオまでは、バスと電車で二時間半ほど。

早朝に家を出て、塾の時間までに帰ってくる、そんな生活になりました。

スタジオでは見るもの、聞く物、全てが私には新しく、楽しく、そして驚きでした。

私の他に日本人の弟子は一人、あとは皆外国人。

教室の張り紙も、会話も英語で、内容は分らないのですが、そのインターナショナルな雰囲気に何だか自分も少し偉くなったような、そんな気持ちにもなりました。

そして、それまで十年、独学で版画を作ってきた私の知識も、道具も、技術も、何もかもがとてもお粗末なものである事も学びました。

師の遠志は、自分から教える事はしません。師や摺師の仕事を見て学ぶのです。ただ質問には丁寧に答えてくれました。

全くの偶然からですが、私は木版画の、そして人生の最高の師を得たのです。

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