下絵から色版の完成まで
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下絵をトレーシングペーパーに描きます。
トレーシングペーパーだと、裏からでも見えるので、このまま版木にデザインを写し取る事ができます。
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下絵を裏返しにして版木にセットします。
墨版(線の版)には桜の版木が適しています。
雪ふりそめる (十四版 四十度刷り) の例
下絵 1
下絵 2
下絵 3
下絵をカーボン紙で版木に写し取ります。
鉛筆は硬めのものを使います。
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墨線を彫り始めました。
写し取ったカーボン紙の線が、手と擦れて薄くなるのを防ぐためにまだ刀の入っていない所をカバーしてあります。
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墨線が彫り上がりました。
桜の版木のサイズが足りなかったので下に木を継ぎ足しました。
紙を乗せる時の目印の「見当」を付けます。
→
→
見当
見当
写し終わりました
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色版の準備に入ります。
手順は次の様になります。
版木 今回は厚さ9mmのシナベニヤを13枚用意します。
13枚全ての版に見当を彫り込みます。
転写用にトレーシングペーパーを13枚用意します。
彫り終わった墨版にローラーで油性インクを乗せトレーシングペーパーにばれんで図柄を摺り取ります。
摺り終ったトレーシングペパーを、インクの付いた面をシナベニヤに当てるように置きます。
上からばれんで擦り、図柄をベニヤの表面に転写します。
13回繰り返しておしまいです。
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転写の済んだ版に、必要な図柄を色鉛筆で描き込み、一部を先に彫り上げます。
写真12の赤い部分はセーターに入る他の色の場所の基準になるので先に仕上げ、墨版の時と同じやり方で必要な版に転写します。
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転写の作業中
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二回目の転写中
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最終色原稿
最終色原稿を作ります。
初めから完全な下絵を描いておいても良いのですが、私はこの段階で下絵を完成させることも多いのです。
墨線、背景の木、セーターの臙脂色など、他の版に先駆けて彫り上げておいた版を下絵用の紙に何枚か摺ります。
一枚でないのは、色を変えた原稿を何枚か描く場合もあるからです。
色鉛筆、パステル、水彩や油絵の具などで色原稿を描き上げます。
この原稿を見ながら色版への割り振り、彫り方などを考えます。
カーボン紙を挟んで
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ここで、シナベニヤの強度を増すための作業について話しましょう。
シナベニヤは桜に比べて柔らかく彫り易いのですが、その分、表面が弱く欠け易いのです。
そのため、細かく繊細な版を彫る時に不安があります。
表面の強度を増すために、水で溶いた木工用ボンド(牛乳ぐらいの濃さのもの)を必要な場所に刷毛や筆で塗ります。
この刷毛塗りの作業は固めたい場所に刀を入れ終わった後、周りのさらいを始める前がいいようです。
ボンドが乾いたら、サンドペーパー(180番〜240番ぐらい)で磨いて、表面を綺麗につるつるにします。
特に細かい所は少し濃い目のボンドを用いたり、二度塗り、三度塗りをする事もあります。
細かい模様
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ボンドを塗る
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カーボン紙による転写
次に、作業途中での、カーボン紙を使った転写についてお話します。
他の色版との重なり、隣り合った色同士の重なりを正確にきっちりとしたい場合にこの方法は手っ取り早く、役に立ちます。
写真18 AをカーボンでBに摺り取った。BをCに転写した。
A
B
C
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色版をどんどん彫ります。
私の使っている彫刻刀です。
自分の手に合わせて柄を作り直してあるものもあります。
刀が切れないなと感じたら,その場で刀を研ぎます。
刀は一目で種類、幅が分るように柄を色分けしてあります。
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彫り残す部分を色鉛筆で描き入れます
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A
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→
→
→
→
彫り終わった版の色が乗らない部分で、紙を保持するために残してある場所(→)の周りを紙やすり(180番程度)Aで滑らかにします。
これは版を摺る時に、ここにばれんが当たり作品の表面に傷や跡が付くのを防ぐためです。
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一応、彫り終えた版
一応、彫り終えた色版を、カーボン紙を使い、墨版を転写する時に使ったトレーシングペーパーに試し刷りしてみます。
それを見ながら、版の最終的なチェックをします。
必要なら、版をわずかに彫り足すなどの修正を加えます。
版のチェック
これでひとまず彫りの仕事は終わりました。
最後に、各色版毎の指定書を作ります。
これは、摺師に対して、用いる色の種類、濃さ、摺りかた、暈し(グラディエーション)の幅、その他もろもろの留意点を具体的に書き込んだものです。
時には、その作品への私の思いとか、その絵の持つ物語の背景など抽象的な事にも及び、摺師を悩ませる事もあります。
勿論、自分で摺る時にはこれは必要ありません。
最後に一言。
自身木版画を制作している方にとってはこの程度の説明では物足りないかもしれません
もっと良い方法もあると思います。
質問や御意見をお持ちの方は、BBSかメールでお寄せください。
私の分る範囲でお答えいたします。
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摺師への指定書
摺りから完成
Printing