摺りあがりまで

摺師

鉄井 孝之

摺師の鉄井孝之氏はこの道五十年を越えるベテラン摺師です。 文化庁認定の「浮世絵彫摺技術保存協会」の理事長も務め、日本を代表する名摺師の一人です。また東京都認定の「江戸木版画伝統工芸師」でもあります。

まずは、墨線、そして各色が摺られて版画が完成していく様子を見てみましょう

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背景 コートのぼかし

木と二度目のぼかし

雪を入れて完成

部分

墨線

帽子 セーター 頬

コート 唇 指

セーター スカート

セーター マフラー

帽子

コートの柄

髪 セーター

バック

摺り度数四十のうちの幾つかをダイジェストで見て頂きました


作者の私自身もこの様な摺り手順を作るのは25年振りのことです。


見ていて何だか自分自身、楽しくなります。


私の摺りの経験は15年ほどです。こんなに見事に摺るのは今の私にはとてもできません。


ばれん一つ、腕一本で摺り上げる摺師の技術には脱帽です。

次に、摺りの実際の様子を見てみましょう。

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部分

紙を必要な大きさに裁断し、予め湿らせておきます。


ここで、紙について少し書いておきましょう。


私が版画に使用しているのは越前生漉奉書です。


福井県今立町の山口和夫さんに紙の厚さや大きさを指定して漉いて頂いています。


山口和夫さんは、六十年にわたって紙漉きをなさっている方です。


氏の漉きあげた生漉き奉書はその強さ、張り、繊維の均一な事、きめの細かさで特に優れており、色合いの美しい素晴らしい紙です。


また、氏の言葉によると、この紙は千年生きるそうです。、

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予め湿らせた紙

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絵の具とブラシの用意

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墨版を摺っています。


ばれん、ブラシなども、必要に応じて様々なものを使い分けます。


版は、絵の具の乗りを良くする為に少し湿らせておきます。

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ぼかしを入れる

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小さな場所は手刷毛で

広い面はブラシで

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紙の持ち方

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作業台のセッティングの様子

絵の具 ブラシ はこび

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摺師の作業台の設定は、江戸時代の浮世絵を摺っていた頃と殆んど変わらないそうです。


動きの無駄が無いように考えられた合理的な配置なのでしょう。


私自身は、正座も胡坐をかく事も苦手なので、摺りは立ってやっています。

バックの摺り

大きな面をプレスを使わずに、ばれん一つで綺麗に摺るのは大変なことです。


冬場でも汗をかきます。


年配の、私よりも小柄な摺師が息も乱さずに摺ることができるのは、長年の体で覚えた力の入れ方があるようです。

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普通に摺られた版

ばかしで摺られた版

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ぼかしたい場所の縁を水で湿す

ぼかしは、木版画の最も効果的な技法のひとつです。


美しく柔らかなグラディエーションを摺り上げるには、やはり経験が必要です。


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絵の具と糊をのせる

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ブラシを回す様にしてぼかす

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二度目のぼかし

広い幅のぼかしの時には、更に二度、三度とぼかしを繰り返します。

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タンポで雪の白を乗せています

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タンポ雑巾

最後に一言


摺りには、彫り以上に様々な技法があります。


作家達が開発した新技法もまた数多くある事でしょう。


摺りに関しての質問も、メールまたはBBSでお寄せください。


私に分らない事は、摺師に話を伺って御答えしたいと思います。

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