H氏の肖像

作品ナンバー  0−53

一年後の春、私は背中に版画をくくり付けた背負子を担ぎ、両手にも版画を提げて、上野公園の道を急ぎ足で歩いていました。

桜の開花も、もうすぐと言う頃のことです。

公募展への初めての出品。 動物園の壁沿いを辿って、都美術館裏の搬入口へと続く道には、同じような荷物を抱えた人たちが黙々と歩いていました。

搬入口の横には、大きな掲示板があります。

二週間後には、そこに入選者の名前が貼り出されるのです。

日本版画協会展。

 平塚運一、谷中安規、山本鼎、恩地孝四郎・・・・・創作版画の歴史に名を残す、私にとっては神様の様な大先輩達。

今、私はその後に続く、一粒の種になろうとしていました。

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