初恋46番 「夕暮れの街に・・・」

川上澄生の詩 「顔」 に寄せて        岡本 流生

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鹿沼市立川上澄生美術館で、澄生の作品、私が澄生の版画や詩から受けた影響などについてお話しをする機会を頂きました。 その依頼を受けてから、澄生の画集や詩を読み返しています。

そんな中で、「顔」の詩から、次の作品のイメージを得ました。 講演の日までまだ間があるので、それまでに版画の作品として仕上げたいと思っています。 私にとっても良い記念になると思うので。

川上澄生 「顔」
1926年

初めに思いついた構想を早速デッサン。 今回は手や足の無い簡単な構図なので、モデルを使わず描きました。
チャイナカラーの服装を思いついたのは、頭の中の何処かに、藤島武二の有名な絵が有ったからでしょう。

構図がほぼ決まったので、衣装の柄など細かいところを決めて行きます。

気に入った柄を更紗の中から探しています。

背景の夕焼を近所で撮影。 バイクで何度か走り回り、丁度良い感じの夕空と出会えました。

衣装の色や柄を変えて、とりあえず二種類で描いてみました。 背景は写真を見ながらパステルで描いています。 色鉛筆よりはパステルの方が、木版画の仕上がりに近い感じで描けます。使った色は絵の余白に記録しておきます。
これは、後に版画にするときの、版の色分けの参考にします。

作業中の様子。 美味いコーヒーと良い音楽は仕事中の必需品。

色を塗り終えた人物を切り抜き、背景に貼り付け撮影。  右はパソコンで処理して、感じを変えたもの、これを、何度かPC上で見比べて、最終的な色や柄などを決めます。

アトリエに並べて見比べているところ。 青い方の柄と赤い方の色合いを直す事にしました。

柄の一部を描き変えたもの。

赤の色合いを抑えたもの。

ここまで、2009年 11月 24日

衣装の色を変えて、もう一枚描いてみました。切り抜き、別に描いておいた背景に貼り付けます。

さあ、これで下絵もほぼ描き終えました。
後は、どの色の衣装でいくかを決めるだけです。

墨版を彫り上げるまで、暫らくは、アトリエに置いた三種類の下絵を見比べ、最終的にどの色、どの柄の下絵を用いるかを決める事にしましょう。

単色の版画と異なり、この色を決めると言うことが、いつも頭を悩ませます。

どうしても一つに絞る事が出来ない時もあります。 そんな時は、色違いで何種類かを作る事もあるのです。

もうだいぶ前に作った「南島祭図」は四種類の色違いが有ります。

また、吉田博先生の有名な帆船の版画は、初めから、計画的に朝や昼、そして夜景、霧といった幾種類もの色違いの作品になっています。

吉田遠志先生の版画、キリマンジャロも美しい色違いの版画が有ります。

勿論、版木も、共通で使えるときも有れば、または、別に彫らなければならないときもあります。

Jan 10th 2010